Vol.5 〜8月の自然誌〜「コマクサ(駒草)」
かつて汗を滴(したた)らせてやっとの思いでたどり着いた稜線(りょうせん)で感激の出会いをしたことがあった。それはザレ場の斜面にへばりつくようにして、淡紅色の花を咲かせた高山植物の女王と呼ばれるコマクサだった。まるで山頂へと誘(いざな)うかのように咲いていたことを思い出す。
コマクサの名前は、花を駒(古語で馬のこと)の顔に見立てたことが由来。生育する場所は、ほかの植物が根を下ろすことが難しい不安定で痩(や)せた砂礫地帯。そこに群生する姿は、孤高な雰囲気さえ漂わせる。
私は見たことはないのだが、高山帯の厳しい場所でも生育できる秘密は、地中深く伸びた根にあり、地上部の五〜十倍ほどの長さに達するという。
今年の夏は高山植物の女王であるコマクサに会いに、乗鞍岳まで足を運んでみてはいかがだろうか。もちろん、インタープリター(自然案内人)と一緒に!きっと夏の思い出として、いつまでも心に残るはずだ!
【コマクサ】ケシ科コマクサ属 Dicentra peregrina