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匠の技が生まれる場所

渋草焼芳国舎:工房編

渋草焼芳国舎:工房編

170年続く飛騨の焼き物「渋草焼」。前回その渋草焼きの窯元芳国舎さんのお店を取材し、歴史やこだわりを伺いました。今回は芳国舎さんの工房に伺い、制作風景を取材させていただきました。

>前回の記事はこちら(渋草焼芳国舎:お店編)

芳国舎は明治12年に勝海舟の命で株式会社化しましたが、焼き物を作る工房はその時に建てられた土造りのもの。当時の文化を知る重要な建物として、それ自体が市の有形民俗文化財に指定されるほど。ご案内された工房のある場所は江戸時代より“渋草“と呼ばれていた場所。今でも通称として残るこの地の呼び名が渋草焼の名前の由来です。

工房

創業当時とあまり変わらず現代にまで受け継がれる工房

工房の職人さんは見習いさんを含め全部で6人。絵付師4人と形成職人2人。下働きから始めてきちんと絵付けが出来るようになるまでには5年はかかるそうですが、みんな1年くらいで辞めてしまうそう。「焼き物職人は厳しい仕事だけど渋草焼がみんなに評価してもらえる間はいいものを作って信頼に応えていかないといけない。そう思って仕事をしています」そう語るご主人からはふるさとの伝統を守る責任や使命が感じられます。

絵付け作業

絵付け作業。素焼きに模様付けする時はまだ色も輝きも完成品とは程遠い

建物の中に入るとちょうど絵付師さんが素焼きの茶碗に下絵を描いているところでした。渋草焼きでは形成した食器をまず800℃で8時間ほど素焼きし、その後にまずは土台として青の下絵を描いていきます。この時にはまだあの美しい白と青は影もなく、ピンクがかったアイボリーをしています。絵付師さんは完成物をイメージしながら焼くまで全く色が違う塗料を使って、しかも後から乗せる青以外の塗料を入れる場所を計算して絵付けをしなければいけません。

渋草焼が完成するまでの工程

原料の石の状態からスタートして渋草焼が完成するまでの工程
1採石 2石粉化 3成形 4素焼き 5下絵付け 6うわ薬 7本焼き 8上絵付け 9上絵焼成

石を砕いて粉にするところからスタートする渋草焼き。素焼きと下絵の後は絵の上からうわ薬を塗って一度真っ白にした器を約1300℃で丸一日付きっ切りで本焼きします。時間をかけてしっかり焼くことで焼き締まり、丈夫なお皿になるそうです。温度管理が難しく、特注の窯を使うそう。気温や湿度にも左右されるので毎回調整が必要で、大変な技術を要します。

左:素焼きと本焼き/右上:成形型も焼き締まりを考慮/右下:絵付けも焼き締まる前提

左:素焼きと本焼き/右上:成形型も焼き締まりを考慮/右下:絵付けも焼き締まる前提

丈夫な磁器を作るのに必要な「焼き締まり」。焼く前の状態で自然乾燥させるだけで8%も縮むそう。完成までには17~18%も縮むので形成職人は完成時の大きさを見越してろくろや型を作らないといけません。その分磁器の密度は高まり、より固く丈夫な食器に仕上がります。「料理と同じでただ焼けりゃいいってもんじゃないんです。見えないところで完成度にこだわりがあるんです」

左:過去の作品の保存/右:案内いただいたご主人と伝統を受け継ぐ若手職人

左:過去の作品の保存/右:案内いただいたご主人と伝統を受け継ぐ若手職人

工房には過去の作品のバックアップも。注文があった時や新しいデザインを考える時に参考にするそう。完成品から形を復元するのは相当な技術と経験がいります。絵付師、成形職人ともに不足しているとのこと。それでもこの文化に興味を持ち、職人になろうと志してくれる若手の育成には力を注いでいます。工房にはまさに伝統を受け継ごうとしている若手さんが制作に携わるシーンを見ることができました。
渋草焼のことを深く知ってほしいから工房見学も受け付けているそう。学生などに飛騨の文化を学んでもらうために説明付きで実施するそうです。30分~1時間程度でお電話で受け付けてもらえるのでみなさんも飛騨高山の文化を学んだりお子様の情操教育のために一度足を運んでみてはいかがでしょう。

お店でお話を伺う取材もさせて頂きました

飛騨物産館 Takayama Souvenir Shop

2015/7/20 UP 取材協力:芳国舎

渋草焼窯元 芳国舎

渋草焼窯元 芳国舎

アクセス 住所:高山市上二之町63番地
TEL:0577-34-0504
芳国舎の商品は飛騨物産館でも扱っております。
※高山駅から徒歩10分
営業案内 10:00~17:30
不定休

飛騨の伝統・文化

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