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支えあい助け合う「結」のこころが育む
世界遺産 白川郷産の「結旨豚」

吉野ジーピーファーム 白川農場

吉野ジーピーファーム 白川農場

霊峰白山を望み庄川に沿って集落が点在する山村。山あいにひっそりと広がる小さな村。白川郷は1995年、ユネスコの世界遺産にも登録され、まるで時を止めたような合掌造り集落の中で、今なお人々の暮らしが守られている日本の原風景ともいうべき美しい里です。この合掌集落から車で10分、庄川の渓谷沿いを下りていくと、まるで大学の研究施設のようなフェンスに囲まれた施設へとたどり着きます。
まだ新しいこの施設は、世界遺産の白川郷の澄んだ空気、美味しい水、この大自然の中で丁寧に育てた「結旨豚(ゆいうまぶた)」を飼育する「吉野ジーピーファーム」の白川農場です。

清流庄川の河畔に張り出すようなここ下田地区は昭和55年頃に離村している集落でかつては合掌集落がありました。庄川の中流から上流までは険しい谷が続くため、その流域である白川郷と五箇山は明治時代に国道が開かれるまで「陸の孤島」となっており、平家の落人伝説が語り継がれるまさに秘境ですが、厳しい豪雪地帯でありながらたくさんの矢じりや遺跡が発掘されたことから、歴史のロマンと不思議を感じさせる場所でもあります。2020年にこの地で農場を始めたのが社長の吉野毅さんです。

佐藤総料理長自ら白川農場へ伺いました

飛騨高山に平成元年、高山市に養豚場を設立、中津川市に次いで、県内三か所目の養豚場です。
「白川村に誘致していただき、候補地が2ヵ所ほどありました。ここはずっと上を高速道路が走っており、東海北陸道では一番長い10.7kmの飛騨トンネルがあります。トンネル工事は難航を極めたそうですが、何と言っても高圧大量の湧水による「水圧」に苦しめられたと聞いていますが、その先の下田トンネルのちょうど下にあたります。こんこんと湧き出る豊富な下田の天然水が使えるのが魅力でした。養豚にはなんといってもきれいな水が大切なんです。水質検査を行い安全性を確認し、Ph7.2くらいの超軟水でとても美味しい水ですよ。」吉野さんが世界遺産の白川郷に農場を、と構想を練り始めたのがおよそ9年前。「飛騨牛に並ぶような名産品をつくりたい。」という想いは、ここ白川郷の地元の方々とも同じだったと言います。
「チャレンジしてみたいという企業があっても、冬季を考えると二の足を踏んでしまうんです。ここは日本有数の豪雪地帯でもあり、冬の間は工事がストップしてしまいます。私たちも工事には3年かけて竣工しました。ここも2.5mくらいの積雪にも耐えられる構造になっているんですよ。」
完成前の2年間は暖冬で雪が少なかったものの、稼働した冬、いきなりの2メートル越えという積雪に見舞われますが、朝から晩までの除雪作業に先人達のご苦労を思い、気を引き締めていこうと思ったそうです。

この場内に入るためには豚を運搬する車両も徹底した洗浄・消毒・殺菌を行い、飼料やガス、燃料などの配達もすべて立ち入ることなく場外で行えるよう設計され、外部から農場への病原菌の持ち込みを防いでいます。人間も同じで出社したスタッフも全員、入場時シャワー室で全身を洗って、用意された下着や作業着に着替えてからでないと中に入ることはできません。繁殖豚舎にいたってはさらにエアシャワーも完備されています。お弁当やスマホにいたるまで、持ち込むものは、すべて紫外線殺菌庫に入れなければならないなど、厳しく徹底した衛生管理が行われています。長靴についてはシャワー後豚舎まで歩く場内専用の外履きを使用し、豚舎ごとに専用の上履き用長靴で飼育管理します。
私たち見学者もカメラや道具を殺菌し、シャワーを浴び、いよいよ農場内へ、緊張感が一気に高まります。

白川農場長である三男の隆さんご夫妻と佐藤総料理長

そんな張り詰めた空気を「こんにちは」と、あちこちから明るい笑顔で元気に声を掛けてくれる若いスタッフの姿が心を和ませてくれました。
「白川村に来て地元からの大きな期待を感じました。人材募集にも本当にたくさんの村の方が応募してくれたのが嬉しくて、スタッフもほぼ村民の人たちです。」
白川農場長である三男の隆さんはこの春、結婚され白川村民として奥様とともに、この農場を盛り立てていこうと頑張っています。
「ここ白川村には山間奥地に生きた先人たちからの『結(ゆい)』という村人の相互扶助があり、合掌造りの茅葺き屋根の葺き替えなどは村人総掛かりで協力し合って行われてきました。そんな人々が助け合い、支えあう心、絆やつながりを大切にしたいと、私たちの豚にも『結旨豚』と名付けています。」飼料用玄米を20%餌に配合し、肉質と旨味成分にもこだわった結旨豚は、しっとり上品な赤身にしつこくなく脂の旨味が感じられると、地元でも評判になってきました。

「私たちの農場は平成14年頃から、生まれてから一切抗生物質、合成抗菌剤、を与えない、完全無薬への取り組みをしてきました。豚はほぼ免疫力が無い状態で生まれますから、初乳を十分飲むことで病気に強い健康体に育てることと、病気を持ち込まないことが何より大切なんです。」と毅さん。
一般的な豚舎では生産効率を高めるために、密飼や抗生物質を用いた飼育が行われています。いち早く完全無薬に取り組んできた農場として、2022年1月には日本農業賞個別経営の部で大賞を受賞。また、白川農場は信頼の証として、JGAP認証を同年3月に取得されています。

豚の健康を第一に考え病気によるストレス無くすこやかに育った結旨豚は、すくすく育ちとても元気です。「遊んでほしそうにすぐに集まってきます。」と隆さん。
ほとんど裸のような肌に見える豚ですが、意外にも暑さに弱く、空調コントロールも大切なひとつ。ここでは段ボール素材のハニカム構造を利用し、外壁の向こうに張り巡らせたクーリングパドという壁を、つめたい下田の天然水が通るときの気化熱を利用した快適なクーラーを備えていて、近くを通ると冷気を感じるほどです。また豚の糞尿の処理においても水洗トイレの原理を応用したフラッシングシステムで臭気の低減に努めている。堆肥は密閉型コンポストで発酵し完熟堆肥を生産し農地に還元するなど、地域の環境にも最大限に配慮がされています。

それでも、どんなに最新の設備であろうと先端の技術を導入しても、生き物を育てているのは人です。徹底した衛生管理や目配りなど気が抜けない仕事の中にも、豚を健康に育てることがおいしさに繋がるという信念のもと、人の手をかけて大切に育てられているのを感じます。人々が支えあい、助け合ってきた『結』のこころを継ぎ、若いスタッフたちが中心となりたっぷりの愛情と思いやりを込めて、実直にいのちと向き合う。その姿に佐藤浩一総料理長もより良い物をつくりたいという共通の想いを新たに、これもひとつの結のこころ、絆となっていくことを感じました。

高山グリーンホテルではレストラン、和食、洋食、中華メニューでこの白川郷で生まれ育った結旨豚をご堪能いただけます。その澄んだ旨味をぜひご賞味ください。

高山市内でも購入できます。
肉の匠家 問屋町店
〒506-0002 岐阜県高山市問屋町26
TEL:0577-36-3291 FAX:0577-36-3271

肉の匠家 安川店
〒506-0842 岐阜県高山市下二之町2番地
TEL:0577-36-2989 FAX:0577-36-3606

2022/6/27 UP 取材協力:吉野ジーピーファーム
社長の吉野毅さん
白川農場長の吉野隆さん

吉野ジーピーファーム 白川農場

白川農場

基本情報 生産農場:有限会社 吉野ジーピーファーム
〒501-5625岐阜県大野郡白川村大字飯島字下田1129
TEL:05769-6-3311 FAX:05769-6-3303

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