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ミシュラン三ツ星のガラス芸術と家具たち

飛驒高山美術館

飛驒高山美術館

高山駅からバスで10分、観光地の喧騒 を離れ、高台に緑に囲まれた白いプレゼントの箱のような外観。特徴的な直線デザインを現代的にとりいれた、まさにアール・デコの建築物。
ここは「宝石箱の中に小さな宝石たちがちりばめられた美術館」と紹介され、なんと6度のミシュラン三ツ星を獲得した飛驒高山美術館。日本の博物館の中で三ツ星を得ているのは6施設です。こちらはガラス工芸品と家具を展示する、日本ではとても珍しい装飾美術館なのです。

※飛騨高山美術館は2020年5月31日をもって閉館いたしました。

左:アール・デコの直線的な意匠を現代流に取り入れた飛驒高山美術館。右:ガラス窓から自然光がたっぷりとそそぐ明るく開放的な空間です。

左:アール・デコの直線的な意匠を現代流に取り入れた飛驒高山美術館。
右:ガラス窓から自然光がたっぷりとそそぐ明るく開放的な空間です。

装飾美術館というのは、絵画や彫刻以外のインテリアや実用的な工芸品を展示する施設で、いわば人々の生活の中で愛され、親しまれてきたアートの世界。
難しい知識や堅苦しさは必要なく、リラックスして空間とアートに親しめるのが魅力です。
こちらは1997年4月に開館、16世紀から20世紀の世界中から収集したガラス工芸と、アール・ヌーヴォー、アール・デコ、現代作家のガラス工芸品や19世紀末の家具や照明器具など1000点以上を収蔵しています。

左:「飛驒高山美術館は建物、収蔵物、庭園のバランスがとてもいいと言われています。」と学芸員の松井さん。右:エントランスには現代アートの飾られた中庭を背景に、ガラスの噴水がお出迎え。下:ガラスの展示室。

左:「飛驒高山美術館は建物、収蔵物、庭園のバランスがとてもいいと言われています。」と学芸員の松井さん。
右:エントランスには現代アートの飾られた中庭を背景に、ガラスの噴水がお出迎え。
下:ガラスの展示室。

ガラスを多用して中庭を取り囲むようにした解放感あふれる空間、吹き抜けの階段を上ると、さわさわとした拍手のような音が聞こえてきました。噴水ホールのドーム型の吊り天井の下には、パリのシャンゼリゼのショッピングアーケードにあったルネ・ラリックのガラスの噴水。10分ごとに水が傘から滴り落ちる音が、心地よい音を響かせていました。
「こちらは噴水の土台となる池の部分もガラスでできています。4人の女神とアール・デコの 左右対称、直線的な意匠が特徴的ですね。当時は向いあって2つの噴水があったそうなのですが、改修工事で行方不明になっていて、のちにこの噴水がフランスの農家の納屋で発見されたそうなんです。」
と学芸員の松井佑木さん。
モチーフとなっているアカンサスの葉は「離れない結び目」という花言葉を持つのだそうで、90年以上前からこの噴水の前で待ち合わせする人たちをきっと見守ってくれていたのだろうと、想像するのも楽しくなります。
そんな風に想像力を働かせてアートを楽しめるのも、ここならではの楽しみ方のひとつ。

パリのシャンゼリゼショッピングアーケードにあったルネ・ラリックのガラスの噴水。今でも10分ごとに水が流れ出し、ドーム天井の光が変化します。

パリのシャンゼリゼショッピングアーケードにあったルネ・ラリックのガラスの噴水。今でも10分ごとに水が流れ出し、ドーム天井の光が変化します。

ルネ・ラリックがそのクリエーションをスタートさせた香水瓶の世界から始まり、現代にもつながる金属や酸、薬品を使ったモーリス・マリノのガラス工芸の技術、ドーム兄弟…。
作品を追うごとにエジソンによる電気の発明が、ランプの登場へとつながり、エミール・ガレに代表されるアール・ヌーヴォーへと移ろいます。
「入れ替えは行ってますが、常設展が中心になっていますので、ゆったりと緩やかな空気感で楽しんでいただけると思います。近年ではヨーロッパからのお客様が多くなってきました。海外からのお客様にとっては、エミール・ガレやルネ・ラリックなどは有名な存在ですので、日本の飛騨高山にこんな作品があったのか、と驚かれ旅先での出会いを楽しんでいらっしゃるようですね。」
と松井さん。

左:100年以上前のルネ・ラリックの香水瓶。中身はどんな香りがするのでしょう…。そんな想像をするのも楽しい。右:画家からガラス作家へと転身したモーリス・マリノの作品。酸を使って立体的なモチーフを浮き出させています。

左:100年以上前のルネ・ラリックの香水瓶。中身はどんな香りがするのでしょう…。そんな想像をするのも楽しい。
右:画家からガラス作家へと転身したモーリス・マリノの作品。酸を使って立体的なモチーフを浮き出させています。

こちらは個人が開館した美術館ですが、そのコレクションのきっかけとなったのが文化勲章を受章したガラス工芸家、藤田喬平氏の作品との出会い。
藤田氏がイタリアで制作した花器やオブジェなどの作品から、まるで蒔絵をほどこしたような代表作「飾筥(かざりばこ)」、この美術館に展示してほしいと寄贈されたダイナミックな作品もみられます。

藤田喬平作:飾筥 国にも寄贈され宮内庁の美術館にも同じものが収蔵されているという、堂々とした作品。

藤田喬平作:飾筥 国にも寄贈され宮内庁の美術館にも同じものが収蔵されているという、堂々とした作品。

ガラスの展示室を抜けると、ぱっと明るく開けた空中通路からは四季折々の表情を見せる中庭から、見下ろす高山の赤い屋根の町屋、遠く乗鞍、北アルプス連峰と、振り返ると白山連峰までを見渡せます。そんな大自然もここでは借景というアートのひとつ。
あちらこちらに、アール・デコの椅子やソファもあり、見学の合間にのんびりくつろぐ時間も魅力です。

左:作品を傷めない特殊なガラスをつかった自然光の入る展示室には、現代作家の作品がみられます。右:エミール・ガレの花器「フランスの薔薇」

左:作品を傷めない特殊なガラスをつかった自然光の入る展示室には、現代作家の作品がみられます。
右:エミール・ガレの花器「フランスの薔薇」

左:ガレとともにアール・ヌーヴォーを代表するマジョレルの部屋。右:マッキントッシュの絵をもとに再現されたマッキントッシュの部屋。

左:ガレとともにアール・ヌーヴォーを代表するマジョレルの部屋。
右:マッキントッシュの絵をもとに再現されたマッキントッシュの部屋。

前もっての予約でご確認いただければ、学芸員による案内も受けられるので、作品について詳しく知りたいという方はぜひ、一緒に廻られるのもおススメです。
様々な光を取り入れることで移り変わるガラスの美しい彩りが、その人の見る角度によって魅力を変えるように、飛驒高山美術館もアートとの向き合い方で、その人なりの楽しみ方のできる空間。
山深い都ながら天領として独自の文化を花開かせた飛騨高山の地は、実は工芸やアートに対する土壌もあり、家具をはじめとする若いクリエイターやアーティストも活躍しています。
飛騨高山をアートという視点で新しい旅をプランニングしてみるのも いいですね。

天気のいい日はガーデン席でも楽しめるカフェやミュージアムショップもあり、入館料なしで利用できます。

天気のいい日はガーデン席でも楽しめるカフェやミュージアムショップもあり、入館料なしで利用できます。

2018/11/07UP 取材協力:飛驒高山美術館

飛驒高山美術館

飛驒高山美術館

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岐阜県高山市上岡本町1-124-1
TEL:0577-35-3535
FAX.:0577-35-3536
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営業案内 9:00~17:00(受付16:30まで)

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