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進化する伝統産業!

柏木工の飛騨家具(工場見学編)

柏木工の飛騨家具(工場見学編)

日本一と言われる飛騨の家具作り。その中でも老舗の柏木工さんのショールームと工場を見学する今回の取材。前半ではショールームを見学しながら柏木工の関さんに、飛騨家具の歴史と驚きのテクニックを解説いただきました。後半は実際に家具を作っているところを見させていただくために工場の中を見学させてもらいます!
>ショールーム編を未読の方はコチラ!

※コロナウイルス感染症の防止の観点から、工場見学は中止しております。

関さんに案内され、工場の扉をくぐるとそこは様々な機械と職人さんが作業する大規模な工場。伝統家具の製作風景というと、私の中ではもう少し昔ながらのハンドメイドで家具を作っているイメージだったのですが、意外なことに機械化が進んでいる工程が多かったです。
「家具の品質は常に一定でないといけません。作り手が変わったからといって脚の太さが変わったり座面の削り具合が変わったらいけません。なのでそういった寸分違わぬ正確性を求められる作業は機械化することで品質を保っています。逆に家具の強度を保つのに重要な木材選びや丁寧な対応が必要なクッションの布地張りなどは職人の手でしっかりと作業しています。単に手作りならいいというわけではなく、かと言ってなんでもかんでも機械化したらいいわけではなく、人の手と機械とを適材適所で使い分けています」

上:木の棒から脚を削り出す作業は毎日決められた本数を同じ品質で作る正確性が求められるので機械化  下:座面の布地張りやヤスリ掛け、組み立てチェックなどは機械ではできない細かな見極めが必要な手作業の行程

上:木の棒から脚を削り出す作業は毎日決められた本数を同じ品質で作る正確性が求められるので機械化
下:座面の布地張りやヤスリ掛け、組み立てチェックなどは機械ではできない細かな見極めが必要な手作業の行程

最初に説明いただいたのは材料の木をパーツに合わせて大まかに振分け、カットする“木取り”の行程。
「どんな大きさ、形、木目だったらどのパーツを作るのに適しているか。これは椅子用、これはテーブル用といった具合です。原料の木材は主に輸入品なのですが、伐採される前に生えていたところと日本とでは気候が違うので、そのまま使うと後で反ったり割れたりします。ですから使えるようになるまで木を寝かせるのですが、そういった下準備や見極めなども目利きの力が必要です。こうして熟練の目で選んだパーツを大まかにカットする行程を木取りといいます。家具作りの最初の行程です。今日はこれから木材が家具になるまでを家具作りの行程に従ってご案内します」
工場内には見学者にわかりやすいよう各工程にパネルがついていて何の作業をしているのか解説してあります。それを関さんの案内で説明いただきながら順番に回ります。

わかりやすい解説パネル。実際に作業している方の側にはどの工程の作業をしているのか看板もぶら下がっており、家具作りの流れに沿って実際の現場を目の前で見る工場見学が楽しめます。

わかりやすい解説パネル。実際に作業している方の側にはどの工程の作業をしているのか看板もぶら下がっており、家具作りの流れに沿って実際の現場を目の前で見る工場見学が楽しめます。

見学の前半部分は木を切ったり削ったりするパーツ制作の行程。後半は組み立てたり塗装したりする仕上げの行程。「おお!」という驚きのテクニックから「なるほど~!」という見えない工夫まで丁寧に解説してくれます。
「家具は一生のうちで、そう何回も買うものではありません。だから、家具選びは慎重にしなくてはなりません。色や大きさ、高さ、座り心地、全体の調和等、家具選びには多くのポイントがあります。私たちの工場はより大きな満足をお届けするために、全てがお客様のご要望をお聞きしてから生産し、お届けする工場です。出来上がってしまっている在庫品を買うのではなく、自分仕様でしつらえて注文する。お客様にあわせて家具を作るのが“柏木工の生産システム”です」
昔は普通の家具屋さんと同じように作り置きの在庫を販売していた柏木工。しかし使う人やシーンも様々な家具は、こだわりや好みが細かく分かれる商品。そこで30年ほど前から品質を向上させ、使ってもらう人の満足を高めるために「その人のためだけの家具」を作るオーダーカスタマイズに切り替えたそう。

オーダーのあった商品に対し、必要なパーツの数を細かく管理。その日の組み立てに必要なものだけを過不足なくピッタリ作って組み立てラインへ。

オーダーのあった商品に対し、必要なパーツの数を細かく管理。その日の組み立てに必要なものだけを過不足なくピッタリ作って組み立てラインへ。

「過不足なく、適切な量を適切に作ることを徹底し、それによって価格面、品質面でお客様を満足させる製品を作る。さらに柏木工の会社としての利益も上げる。この工場はそんな工夫が満載なんですよ」
お客さんも自分たちも満足できるようにするための“適材適所”へのこだわり。最初に伺った機械化の話も品質を高めることが大前提だから、効率化を進めてもきちんと必要な行程は手作業で行うことにこだわっていたんですね!
「この工場では部品の管理だけでなく、人材の登用や木くずにいたるまで適材適所にこだわっています。例えばパーツの削り出しで出た木屑は外のボイラーにくべて工場の暖房として大切に使っています。また、製品のことがきっちりわかっている人に任せたいのでダンボールの組み立てや梱包作業は業者に委託せずに定年退職した職人さんを再雇用して担当いただいています。形や性質のことをきちんと理解している人がした方が梱包の質も上がるし、まだ働きたい職人さんへの雇用の提供にもなります」
そこまで考え抜かれていると聞いてびっくりしました。この工場の“適材適所”には三方良しの工夫が詰まっているんですね!

上:完成品。形や大きさも様々な製品を、特徴を知り尽くした職人がきっちり梱包。 下:完成品を出荷すればそこで終わりではなく、きちんとした修理工房を工場内に併設。

上:完成品。形や大きさも様々な製品を、特徴を知り尽くした職人がきっちり梱包。 
下:完成品を出荷すればそこで終わりではなく、きちんとした修理工房を工場内に併設。

見学もいよいよ終盤。後は組み立て家具として再度パーツごとにバラし、完成品として梱包・出荷するのみという段階まで見学したところで、さらにもう一つ大事な行程があるとのこと。案内されたのは「修理工房」。
「家具は使っているうちにどうしても傷つくもの。アフターケアもしっかりしないといけません。たとえ廃盤になった商品でも、うちの家具ならどんな家具でも修理できるようにしています。飛騨家具ブランドは最低でも10年間は品質保証ができないと名乗れないブランド。私たちはその高い品質基準をクリアするために納品後の割れや反りの対応はもちろん、長年愛用いただいてできた傷や壊れた脚、背もたれ、パーツの破損や劣化にも全て対応しています」

工場を1周回ってからショールームに戻ってくると家具を見る目が一味違ってきます。

工場を1周回ってからショールームに戻ってくると家具を見る目が一味違ってきます。

約40分の工場見学が終了し、スタート地点のショールームに戻ってくると、「あ、これはさっき布地張りの行程で作られていたのと同じ柄の椅子だ!」「このへこみは機械で均等に作っているんだ!」ということがわかってショールームを見るのが一段と楽しくなります。
「工場見学は雨や雪など天候が悪い日でも楽しめる観光スポットです。定番の観光スポットにはない飛騨の伝統産業に触れられる特別な体験ができますし、私たちももっと飛騨家具を普及させたいのでぜひ皆さんに見学いただきたいです。1日2回、午前の部と午後の部があり、予約しなくても参加いただけるのでぜひお気軽にお越し下さい」
ありきたりな観光スポットにない楽しみを味わえて今日はとても楽しかったです!ご案内いただきありがとうございました。

2020/06/26 更新 取材協力:柏木工

柏木工 工場

柏木工 工場

アクセス 住所:岐阜県高山市上岡本町1丁目260番地
TEL:0577-32-7288
営業案内 9:30~17:30
無休(年末年始を除く)
家具工場
見学ツアー
・平日2回 10:30~/13:30~(約40分)
・定員20名
※人数が多い場合は事前にご予約ください。

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