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「屋台組」が守る飛騨高山の宝物

高山祭屋台 鳩峯車(きゅうほうしゃ)~vol.3~ 受け継がれる情熱

高山祭屋台 鳩峯車(きゅうほうしゃ)

日本三大美祭にも数えられる高山祭。
これは、日枝神社例祭「山王祭」(4月14日・15日)と桜山八幡宮例祭「八幡祭」(10月9日・10日)の総称です。
豪華絢爛な屋台(やたい)が魅力のこの祭は、2016年に「山・鉾・屋台行事」として「ユネスコ無形文化遺産」にも登録されました。

祭屋台の維持管理から祭礼での曳き出しまでは「屋台組」という住民組織によって担われています。
この連載では秋の高山祭、八幡祭で曳き出される屋台の一つ「鳩峯車(きゅうほうしゃ)」を守る「鳩峯車組」を取材し、その歴史や魅力に迫りました。

(vol.2 から続く)

農村とのつながり

祭が行われるのは高山市中心地の一部。
安川通り~鍛治橋を境に、上(かみ・宮川の川上)が春の山王祭、下(しも・宮川の川下)が秋の八幡祭の区域になります。このように町人を中心に興された高山の祭ですが、近隣の農村とのつながりもありました。

鳩峯車組では昔から、付き合いのある近隣の村から屋台を曳く人足や囃子方として参加してもらっていました。 町人と村人が一緒に祭を運営していたのです。
現在は組内だけで屋台を曳く組も増えましたが、鳩峯車組では現在も、高山市郊外にある山口町(旧 山口村)と 江戸時代からの縁が続いています。
「人足頭(にんそくがしら)」を務める方は、代々祭への奉仕をしていることに大変誇りを持ち従事して下さるそう。また、祭事に使う榊も農家の多い山口町で調達していただくなど、深いつながりを持っています。

祭の前に組の皆で飾り付け準備をする「屋台やわい」の様子

祭の前に組の皆で飾り付け準備をする「屋台やわい」の様子

宵祭だけの特別な光景

祭礼1日目の夜、提灯が灯された屋台が町を練り歩き、昼間とは違ったその姿に感嘆の声が上がります。この「宵祭」の際、幻想的な屋台はもちろん、夜だけしか見られないさまざまな光景があります。

宵祭の時だけ、鳩峯車の曳き手の衣装は麻でできた「白丁(はくちょう)」と呼ばれる衣装に着替えられます。これは、かつて八幡祭が旧暦の8月に行われていたことから、夏の衣装として麻のものが使われた名残りなのだとか。
また、昼間は数人で交代しながら屋台を曳くのに対し、宵祭で屋台をひく曳くのは7人。衣装もぴったり7人分しか所有していません。

宵祭、提灯に照らされる鳩峯車

宵祭、提灯に照らされる鳩峯車

そして宵祭の終わり̶
世界中から訪れた観光客が見つめる安川通り沿いで人々を楽しませ、再び下町の通りに入った屋台は、子ども達が歌う曳き別れ歌「高い山」とともに、それぞれの蔵へと帰って行きます。
いつの間にか観光客よりも地元の人が多くなり、厳かな空気に包まれる頃。
「この時が、祭のクライマックスやなあと思いますね」
そう敏彦さんがしみじみと語るように、それは本当に、じんと胸にせまる瞬間です。

「うちの屋台が今年も蔵へ帰ってきた。」「はや、祭も明日で終わってまう。」
今年も屋台を出せた嬉しさと、祭が終わってゆく寂しさと。屋台組の皆で様々な想いを共有しながら屋台蔵の前に集まり、この夜を惜しむように酒を酌み交わします。
家々の前に灯された祭提灯も宴が終わるまでは消されることなく、祭の夜は更けていきます。

守られ続けるもの

お話を伺っていると、祭には深く関わる人しか知りえない細かな「決まりごと」がたくさんあるのだなと気付かされます。

「はるか昔からこんなに詳細まで、祭のやり方が伝えられているんですね」
そう驚きとともに伝えると、興味深いお話がありました。
「組には、大津絵(以前の屋台)の頃から祭規(さいき)があるんですよ。
その後時代と共に2~3回作られ、現在は明治30 年の祭規が基本となっています」

祭規とは、祭を執り行うための決め事が記されたもの。それらの文書は保管され代々守られています。時代が移り変わるとともに祭の形が変わることもありますが、基本はこの「祭規」を大切に、この先へも受け継がれていくのでしょう。

屋台蔵には屋台とともに様々な歴史も仕舞われています。

屋台蔵には屋台とともに様々な歴史も仕舞われています。

まるで我が子のように

鳩峯車組に生まれ、屋台に夢中なお父様を見て育ってきた富子さんは、
「父は、実の娘以上に鳩峯車を可愛がっていたかもしれませんね」
そう笑って昔に想いを馳せます。
祭の朝、綺麗に飾り付けた屋台を皆の前に曳き出す時。まるで大やわい(飛騨弁で念入りに支度をすること)した大事な娘をお披露目するようだと、感無量の眼差しで見上げていたお父様を忘れられないのだそう。

そんなふうに屋台を誇る想いは、川上さんご夫妻にもしっかり受け継がれています。
そしてお子様たちも、進学のために高山を離れていた時期にも、祭には帰省せずにはいられなかったのだそう。
飛騨びとにとって祭への情熱は時に、地元へ帰ることの大きな理由になるほど、強いものなのかもしれません。

川上敏彦さん・富子さんご夫妻。貴重なお話をありがとうございました。

川上敏彦さん・富子さんご夫妻。貴重なお話をありがとうございました。

2018/12/14UP 取材協力:巻葉屋 分隣堂

高山祭屋台 鳩峯車

高山祭屋台 鳩峯車

アクセス 〒506-0842
岐阜県高山市下二之町上組
開催日 秋の高山祭「桜山八幡宮例祭」
10月9日・10日

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