たばる話

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飲み屋街で90年以上前から愛される遊技場

半弓道場

半弓道場

高山の中心地、国分寺通りと本町通りから、すぐの路地裏をのぞくと雰囲気は一転し、温かくも懐かしいどこか昭和の香りが漂う「朝日町」という飲み屋街がつづきます。
夜になると連なる居酒屋の灯りがともって、高山を愛する地元民と観光客が美味しいものと美味しいお酒を求めてそぞろ歩く姿。そんな朝日町の中心にここ「半弓道場」の看板があります。
開け放した戸からひょい、とのぞいてみると、小さいけれどなんと弓道場。地元でも若い人にはなぜこんなところに?という疑問と、年配の方には懐かしさを感じさせる町場の遊技場なのです。

竹でできた1m90cmとやや短めの弓と矢を持ち、和紙でできた直径8寸(26.4cm)の的を射ると、ポン、と乾いた心地いい音が道場に響きます。
打ち方を習っていざ構えてみると的は意外と小さく、これがなかなか難しく矢は外れてしまいます。
「まず射ってみて、自分の癖を見て、もう少し左へという感じで調整していくんです。」と道場主の黒岩直己さん。

後継者として道場を引き継いだ黒岩直己さん。市内でカフェを営んでいます。

後継者として道場を引き継いだ黒岩直己さん。市内でカフェを営んでいます。

弓道と言うと立って弓を射るものですが、ここでは椅子に座り、土を盛った7メートル先の的を射るスタイル。本格的な弓道が28メートルなので、4分の1の距離になります。
元は宮崎県日南市飫肥地方に「四半的」という弓道が親しまれており、遊びの弓矢としてそこから全国に広がったものだと言われています。

「高山にこの半弓道場ができたのが昭和4年。以前、観光でいらした年配のお客様が、昔は歌舞伎町や温泉場にもあったと懐かしんでくれましたが、ここが日本で唯一残っていたものです。ある意味、どこよりも遠い飛騨高山にこんなものが残っていたのか!と驚きました。」

的までの距離は弓道の4分の1のスケール。着席したまま矢を射る流鏑馬のスタイルです。

的までの距離は弓道の4分の1のスケール。着席したまま矢を射る流鏑馬のスタイルです。

東京都の出身、航空会社を32才で退職するとバイヤーの仕事をしながら7~8年かかって、地球上の全世界248の国と地域への入国を果たしたというユニークな経歴を持つ黒岩さん。学生時代の友人が飛騨高山にいたことから時々、遊びに訪れていたそうです。
「このまま東京にいると働きすぎる、と移住を考え始めたとき、世界を回った経験からいろんな国の方と話ができるし、ゲストハウスでも始めようかと思ったんです。飛騨高山に気に入った物件が見つかりましたが、ゲストハウスに使うのは不可だということでカフェを開店しました。
半弓道場は常連客として通っていたんですね。1日仕事をして、帰りにここで弓を射って…というのをルーティンにしてたのですが、ある日、いつ行ってもこの看板の電気が消えたままになってしまいました。ずっと閉まっていることが心配になり、上階に住んでいる先代の三島さんのドアを叩いたんです。」
高齢だった三島さんとお話しし、ここが廃業の危機にあることを知った黒岩さんは即、行動に移ります。

「ここにある弓と矢はなんとしても飛騨高山から出さない、これが無くなってしまったら日本で唯一の半弓道場が消えてしまう。そんな一念でここにある弓と矢を自分に売って欲しい、と直談判に来たんです。」
黒岩さんの想いを知った三島さんが、それならば跡継ぎになるか、と道場を引き継ぐことになりました。
「高山に住みはじめてたった1年なのに、周りからは何故お前が?という驚きの声とともにたくさん、感謝や応援の声もかけてもらいました。」

曲げわっぱに山中和紙を5、6枚重ね小麦粉を糊にして張り替える的。

曲げわっぱに山中和紙を5、6枚重ね小麦粉を糊にして張り替える的。

弓矢に七面鳥の羽根を貼りリペアするのもスタッフ自ら行っています。

弓矢に七面鳥の羽根を貼りリペアするのもスタッフ自ら行っています。

黒岩さんが飛騨高山から出さない、と願った古い弓や矢は本物より短くどこにも売っていない手作りのもので、現在もメンテナンスは自分達が手作業で行っています。
「羽根部分は七面鳥の羽根なのですが、これを3か所同時に貼り直せる工具を常連さんが作ってくれたり、的にも、飛騨市で漉かれている山中和紙を使い小麦粉と水を混ぜ補強して張替え、すべて持続可能なもので自分達の手でできるようになりました。」
古い弓には漢数字の番号が振られ、麻紐の張り具合で弓の速さが変わる。自分の使った弓の番号を覚えておき、自分の癖を知り調整していくのが常連客の楽しみ方だそう。

「自分が跡を継いでから中が見えるように戸を開け放し、透明のガラス窓に変え、外から見やすいようにしました。外国人にも英語で楽しみ方を教えられますし、子供でも楽しめる。修理をしながら昼間の営業をするときもあります。日本の酔っぱらいと、観光客と、外国人が混ざって楽しそうに弓を射る、そんな場が大好きなんです。」

かつて世界中を旅した黒岩さん。自分はどこに住んでもいいが、まず住んでみてそこから何をするか?だと言います。住んでみて、見つけた半弓道場との出会いが新しい道を実現させてくれました。それはまず一本矢を射てみて、そこから自分の癖や弓の仕組みを知り、修正して的へ近づけていくという、弓道の楽しみに似たものがあるのかもしれません。

世界中248か国を旅した黒岩さん。飛騨高山での出会いが新しい道へとつながりました。

世界中248か国を旅した黒岩さん。飛騨高山での出会いが新しい道へとつながりました。

「めざすはまず創業100年です。それから移動式半弓道場や2店舗目を考えていくのも面白いと思っています。それにはここの場所があってこその話なのです。」と黒岩さん。
90年を超えてmなんと天井や先代の奥様の手作りだという白い幕にも酔客の矢の跡が残る道場のなか。50点を超えるとその年内は名前を残してもらえるという壁の名札。長年、地元で親しまれ愛されてきた何故か懐かしくも温かい空間。
ここ飛騨高山の、この場所にしかない空気とともに、まずは一矢、いかがですか?

実際に体験したレポートはこちら >>

Youtubeでは、
半弓道場のイメージ動画を公開中!

高山の中心地、国分寺通りと本町通りから、すぐの路地裏にある温かくも懐かしい
どこか昭和の香りが漂う「朝日町」。懐かしさを感じさせる町場の遊技場が朝日町の中心にあります。

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2021/01/04 UP 取材協力:半弓道場

半弓道場

半弓道場

アクセス 住所:岐阜県高山市朝日町11-2
TEL : 090-1234-5959
高山駅から徒歩15分
おすすめ情報 営業時間:19:00~22:00
不定休
※昼間営業の場合あり
インスタFacebookでご確認ください。
料金 初めての方:10射 600円(射ち方指導料込み)
2回目以降の方:10射 400円

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